惡の華

『悪の華』には、テオフィル・ゴーティエへの献辞が記(しる)されています。 ですがこの詩集は、『悪の華』を訳したものとは到底言えません。        オリジナルの内容・文章・文脈・単語など大胆に変更しています。また、        ボードレールの真骨頂との言える韻への配慮も行っていません。        詩の真意から外れないことには、出来る限り気を使いました。 そしてとにかく、分かりやすく面白いものにしようと仕上げました。        そう言う意味では、『悪の華』へのオマージュであると思っています。  

※1レスボス島

ラテンの享楽と、ギリシャの快楽を生んだ島、 レスボス。この島での口づけは、けだるくて陽気。 太陽のように熱く、冷えたスイカのように清々しい。そして、 昼も輝き、夜もまた輝くこの島の、なくてはならない飾りもの。 ———ラテンの享楽と、ギリシャの快楽…

地獄に落ちた男たち ※1ローランとデュランダル

蛾が狂ったように飛び交う蛍光灯を、 デュランダルは見つめながら、 整髪剤とタバコのにおいの染みついた枕を頭の下に抱え、 自分の身体の表面から、蛹の殻を剝がしてくれる力強い愛撫を、想像していた。 それは、暴風の中、旅人が目を窄めながら、 けさ越え…

吸血鬼の変身

イチゴのような半開きの唇を、指でなぞりながら、 火に投げ込まれたヘビさながらに身をよじり、 乳房をブラジャーのワイヤーで揉み上げ、 苦くて甘い息を吐き、女はこんな言葉を洩らした。 ———「ワタシ、知っているわ、アンタの良心をブッ飛ばす方法を。 そ…