惡の華

『悪の華』には、テオフィル・ゴーティエへの献辞が記(しる)されています。 ですがこの詩集は、『悪の華』を訳したものとは到底言えません。        オリジナルの内容・文章・文脈・単語など大胆に変更しています。また、        ボードレールの真骨頂との言える韻への配慮も行っていません。        詩の真意から外れないことには、出来る限り気を使いました。 そしてとにかく、分かりやすく面白いものにしようと仕上げました。        そう言う意味では、『悪の華』へのオマージュであると思っています。  

吸血鬼の変身

イチゴのような半開きの唇を、指でなぞりながら、

火に投げ込まれたヘビさながらに身をよじり、

乳房をブラジャーのワイヤーで揉み上げ、

苦くて甘い息を吐き、女はこんな言葉を洩らした。

———「ワタシ、知っているわ、アンタの良心をブッ飛ばす方法を。

それにしても、何て、ぬめった唇なのかしら……。

ワタシの乳房は、どんな涙も乾かしてきたし、

おじいちゃんを、赤ちゃんに変えてきたわ。

真っ裸になって、男の前に立つときには、

月にも、太陽にも、女王にも、ライオンにでもなれるわ。

ワタシのオマンコは、そんじょそこらのものとは違うのよ。

咥え込んだチンポが悲鳴をあげるって評判よ。

特にこの首を絞めてごらんよ。

締まりがよけい良くなって、

布団までボゥーとして、

半死人だって射精するわよ。」

 

オレはキンタマ汁を全部吸い取られ、

ぐったりとなったまま、口づけのお返しをしようと、

女の唇に舌を差し出したとき、そこにオレは見てしまった、

ぬらぬらと膨れ上がった、膿だらけの革袋を!

オレはゾッとして思わず両目をつぶった。そして夜明けを待つことにした。

やがて、清々しい朝日が部屋を満たした。そっと目を開いて、

傍らの女を見た。そこにはあの血色の赤味を帯びた人間はおらず、

骸骨が散らばり、その骨の一つ一つが震え、

冬の夜通し風に揺られる、壊れた風見鶏や、

鉄の棒にぶら下がった看板の、

あの軋む音に似た泣き声を、

からからと上げていた。